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勢い良く音楽室の引き戸を開けると、ピアノの音が止まった。
「はぁ……はぁ……、やっぱ先輩だ」
勢い良く階段を駆け上がったので、ぜぇぜぇと息切れをしながらピアノの方をみる。
そこにはアタシのことをギロリと睨む三年の二条先輩の姿がそこにあった。
二条先輩はこの高校の中でも結構問題児で、荒い言葉で皆から恐れられてる。
でも、こうして誰も来ない音楽室で密かにピアノを弾いているのはアタシは知っているのだ。
いつもはアタシが音楽室へ辿りつく前にさっさと先輩は帰ってしまうのだが、今日はこうして間に合うことが出来た。
「……何しにきたんだよ。ここ五階だぞ?」
「決まってるじゃないですか。アタシは先輩のピアノを聴きにきたんですよぉ。さぁ、遠慮なく続きをどうぞ!」
アタシはまるで司会者のように先輩に続きを弾いてもらう様に促した。
しかし、先輩はピアノをしまって帰ろうとするのだ。
「アホらし。帰る」
先輩はリュックを担いで音楽室を出ようとするからアタシは必死にそれを引き止める。
「なんで、帰っちゃうんですかー。きーきーたーいー」
「聴かせるために弾いてるんじゃねぇよ。見世物じゃねぇ、帰れ。ってか離せ」
「嫌だー。先輩が弾いてくれるまで離さない」
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