友だちの遅刻

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 駅から直結のショッピングモールがあるので、駅前は賑やかだった。他にも待っている人たちがいる。 数人で固まって話しているグループがあったり、私のようにひとりで待っている人もいる。それらを見向きもしないで、大勢の人たちが通り過ぎる。  待っているのは苦手。たくさんいる人の中で、たったひとりで残されたような気持ちになる。どこかでミルクティーでも飲もうかと思っていると、改札口から一気に人が出てきた。  電車が着いたようだ。  未菜が来るはずはないけれど、人の流れを見ていた。  こんなにたくさん人がいるのに、知らない人ばかり。みんな同じに見えて、区別がつかない。  でも、その流れを泳ぐようにスルスルと抜けてくる人がいた。運動神経がよさそうな動き方。  キレイな動きをする人だった。  ただ、なんだか見覚えがある。  軽やかな足取りの細身の男性が、パスケースを手にしてこっちにつっこんで来るかのように改札口を出てきた。 「荒垣(あらがき)先輩?」  思わずその人の名前を呼んでいた。  寝ぐせなのか短い黒髪がはねて、いつもよりも若く見える先輩がこっちを見る。  すっとした流し目に、ナチュラルな仕草。  思わず魅入ってしまった。 「新見(にいみ)?」  低い声で先輩が私を呼んでこっちに来た。私の前に来ても、せわしなく足を動かしていた。
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