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クロはベリータルトの最後の一口をサッと片付けて椅子から跳び跳ねました。
すると彼が座っていたところに鞘がクルクルと飛んできて、椅子にぶつかり大きな音を立てました。
「貴様はなぜいつもいつも姫様に無礼な態度で接するんだ! あの時だって本当は――」
「はっ、そう怒鳴るなよ。俺は面倒を見ろって言われただけで、ご機嫌を取れとは言われてない」
クロは相変わらずのニタニタした笑顔で二人を見ます。
事情を知らない人が見たら誤解を生んでしまいそうです。
「俺はこいつの小間使いの前に宮廷道化師だ。場合によっちゃあ俺の方が立場は上なんだよ」
クロはそう言うと、いっそう顔を引きつらせてニタニタします。
まるで口が耳まで裂けてるみたい!
「くっ……」
トスクは思わず歯噛みしてしまいます。
それもそのはずです。
だってクロはもともと王様の道化師なのですから。
いつも王様のそばにいたクロは、色々なことを王様に助言していたので、王様からの信頼はとても厚いものになっていたのです。
だから彼が王様に口添えすると、王様は彼の言った通りに国を動かしてしまうのです。
きっと彼ならお姫様の結婚相手だって好きに決められてしまうのです。
「ひひっ、そう睨むなよ……すぐに……いなくなってやるからよ」
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