第1章

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 ぼくは二年の間でにそれなりに現金な男に仕上がっていたので、早々に現在の彼女がいかに愛らしいかを愛でる方向にシフトできた。  寝覚めに「おはよう」と呼びかけると「おやよー」と壁に向かって返事する姿も、  ゲームセンターのクレーンゲームで三千円ぼくに投資させた挙句、景品が取れないとぼくの脛を蹴り上げ、拗ねてしばらく口を聞いてくれなくなる理不尽さも、  多少不機嫌でも「君より綺麗な人など知らない」とか適当なお世辞を言えば、若干気持ち悪い笑顔とともに直ぐに上機嫌な照れ顔になるチョロさも、  ぼくより背を高く見せようと、背伸びして、バランスを崩して、転けて涙目になる無様さも、  激しすぎて純粋に痛くて段々と腹が立ってくるボディタッチも、  目にかかりそうな髪をかき上げてやるとくすぐったそうに身をまかせる顔つきも、  ぼくは全部、愛らしく、大切に思えていた。  だが、彼女はそうではない様だった。  色々、上手く折り合いがつけられずにいた。  デートではしゃぐ彼女が時折ぼくを見てみせる、期待していたものと違う何かを目の当たりにしたような表情に、  ぼくをからかおうとした後に見せる寂しげな面持ちに、  ぼくは彼女との恋人関係がやがて終わることを予感するのだった。
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