第1章

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 そして、彼女がぼくよりこの大学に入るのに二年余計にかかったという現実。  彼女はそれが上手く受け入れられない様だった。  二年の課題に悪戦苦闘するぼくの姿を、寂しそうに眺める彼女の顔を何度も見た。  構ってやらないことが寂しいのだと思っていた。  でも違ったのだろう。  彼女は自身の課題について一度もぼくには相談を持ちかけなかった。  同じ一年の友達を大事にして、そっちに相談しているのだと思った。  でもそれがぼくに相談しない理由の全てではなかっただろう。  二年というズレが、彼女に重くのしかかっていた。  足並み揃え、みんなで同じ時間を歩むのが「普通」で「当たり前」だったのに、そこから外れてしまったという現実が、彼女を決定的に揺るがしていた。  だからなのだろう、彼女があの時の続きを求めたのは。  あの時に帰れたならばとどこかで思っていたのだろう。  ぼくが一番、彼女のズレを体現しているというのに。
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