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第1章
ぼくには「先輩」がいる。
多少腹立たしくはあるが、それなりに好意を抱いている「後輩」だ。
「せんぱーい!」などと可愛らしい声とともに、背後から挨拶代わりにチョークスリーパーを決めてくるような女である。
毎度のことなので、彼女の腕が絡みつくより早く両の腕で首を守ることは、もはや脊髄反射と呼べる速度に至る。
そのまま体をひねり、足払いを加えつつ相手を地面に叩きつけようとするも、そこは彼女も慣れたもので、逆に勢いを利用してタイミングよく腕を外し、華麗に宙を舞い鮮やかに着地する芸当をいつの間にか身につけている。
ぼくが頸動脈洞反射により彼女に落とされた回数が七回を数えるのに、ぼくが彼女を地面に叩きつけたのは二回だけだ。あと五回分、借りを返すための方法を目下検討中である。
どうしてそんな間柄になったのだったか。
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