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だが、通りに何戸か乱立している雑貨屋の一つに入ってみれば。棚に陳列されているのは穀物や果実等の食糧ばかりで。新聞は勿論、雑誌もない。
ならば別の店かと斜向かいの雑貨屋に入れば、今度は食糧がなく。細かな家具や衣服が陳列されてやはり新聞はない。
二軒目の雑貨屋で、あからさまに陳列する種類が違う景色に鳶は首をかしげて。
「…あれ?さっきの雑貨とここの雑貨は別の雑貨って事?」
「らしいな」
「グリ、前はどうだった?」
「雑貨屋で買った。あん時は新聞と文具と酒や菓子も売ってあったんだけど」
どうやら、雑貨屋の中でも置いている品物は店舗によってかなり違っているらしい。物は試しと店主に新聞の有無を聞いてみれば、やはり新聞は扱っておらず。新聞売りが大通りで売っているらしい。
「昔はあったんですけどね。新聞売りが来てから、おれらが扱う事はねぇんです」
「…それで前は買えたのか」
「姉ちゃん。新聞売りの居場所はわかる?」
「こぉの近くらと、郵便箱らかね。ここ下がった交点を東に入ったがんに魚の屋台がありますけ、そこをちょっとだけ上がって青い看板の角をまた東に入って直ぐの郵便箱に立ってるわね。すぐ分かるんでねぇんろっか」
「え?」
「はい?」
思わず、口をぱかっと開けて訊き直したグリチーアと鳶に店主は慌てて、
「あいや、すんません。ひょっとして、お客さんスヴァリグルは初めてですかね?」
「えぇ、まぁ」
「あきゃぁ…すみません。そうせ分かんねわ。今ご案内しますけ」
「いや、あの、大丈、」
「ムスィ!裏に居んろ?ちょぉ来なせ」
店主はグリチーアが止める間もなく倉庫にいた従業員を呼んで。
「何ですかぁ?」
「お客さん方がテンギに会いてぇんて。道案内するすけ店番してれ」
「いいですよー。序でにうちの分も一部買うてくんろー」
「のめしこき」
「テンギによろしゅぅ言ってくんねぇ」
「良いすけへぇ、さっさと来ぇ!そうせ行きましょか」
さくさくと前掛けと三角巾を外した店主が店を出て。
「いいのか?」
「こればかりは頼るしかないな。客応答じゃなくて、厚意な」
「……分かった」
グリチーアと鳶は、店主の後ろをついて行く外なかった。
「はんね、すみませんでしたぁ。ご旅行の方らったんですね」
「…こちらこそ。なんか、すんません。店を空ける事になって」
「良いこて良いこて。うちのムスィは間の抜けた子ですけどやる事はやる子らすけ。お店の事は安心してくんなせ。スヴァリグルには観光ですか?」
「いえ、人捜しです」
「あ、そぉいんかぁ」
「ただ、ここらの時事的なもんも知っておきたいんで」
「あぁ、鰐革のお客さん。こっちです」
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