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僕が眠っている間にボクが出てくるようになってから十年ほどの歳月が流れた。 もちろん始めの頃は訳も分からず、夢なのだと思い込んでいた。 『それ』が夢ではないということに気づいたのは、ボクが顕現してから一年ほどが経った頃──夢だと思い込んで一年を過ごした頃──ボクが僕に話しかけてきた。 「おい、僕」 「なんだよ? 眠いから後にしてくれ」 「眠いのは当然だ。ボクも眠い。それに後じゃ話せないんだ」 当然この頃の僕は知らないので、話しかけてきてもしばらくは夢の延長だと考えて無視していた。 そしてしばらくして、 「やっと話す気になったか……。ボクがどれだけ長い間……」 「いいから本題に入れよ。僕は気が変わりやすいぞ」 「ああ……、じゃあ僕とボクについてボクがわかっている範囲で教えるぞ」 「夢オチはやめろよ?」 「だったらわざわざ説明しないさ──ボクは、僕のもう一つの人格だ」 「おいボク……頭大丈夫か?」 「大丈夫だ。ちゃんと専門家に聞いてきた」 「ボクは僕の知らないところでなにをやってるんだ……」 「やましいことはなにもない。……どうやらボクは僕が眠っている間だけ動けるみたいなんだ。で、今は僕が眠りかけていてボクが寝起きの状態なんだ。それでしか話せないようなんだ」 「…………」 「おい、まさか寝てないだろうな」 「寝てないよ……」 「ならいいけど。質問はあるか?」 「特にない……」 「眠いんだな? さては眠いんだな? まあ明日も学校だしな。じゃあおやすみ」 「…………」 「もう寝やがった」 そんなこんながあって、だがボクがなぜ出てくるのかは果たして専門家とやらにも分からなかったようだ。まあ、その辺りは個人の要因だから、一概に言えることではないのだろう。だだかなり少ない事例のようではある。フィクションではよく取り沙汰される題材だが、記憶喪失と同じで──これもだだの偏見だが──現実にはほぼないことのようだ。 しかしボクの言うところによると、僕の肉体を借りてボクが活動しているようなのだが、つまり僕とボクの肉体は休む間もなく動いているのだが、不思議と僕に疲労感はない。ボクが出てくる以前のことはよく覚えていないが、以前と変わっていない気がするのだ。 ボクにも訊いてみたが、ボクにもそれはよくわからないと言う。
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