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序
最初はフレッシュ一辺倒だった新入社員達も、二年目になると、はっきりとその方向性が別れてくるものだ。
「え~~、今月も営業トップは渡会だ。はい、拍手ッ」
朝礼で課長が嬉しそうに告げている。
「ありがとうございます。皆さんのご協力と、課長の御指導のおかげです」
胸を張った良い姿勢で渡会が会釈をした。
「おっし。流石ッ。全員、渡会を見習えッ。……特に、砂針ッ。オマエ、最下位だぞ。最下位ッ。……同期にこんな差を付けられて、なさけ……」
情けない、と言おうとしたのだろうが、パワハラとか色々考えなきゃいけない昨今の社会情勢を意識したのだろう。
「悔しいだろう。もっと頑張れッ」
そう課長は言い直していた。
「……はい……」
猫背のまま、不貞腐れた顔で明後日の方向を見ながら、俺は答えていた。
課長の舌打ちが聞こえた。
俺は砂針大輔という。
某保険会社で営業の仕事しているのだが……。
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