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「そもそもあなたには自覚が足りません。いいですか、ちゃんと決まった恋人ができたんですから。やっと、今更ながら、いい歳して。これまで一体何をしていたのかってくらいに無駄に時間こそかかりましたが」
何が言いたいんだ。
「本題は何よ」
促すと、ちょっと我に返った様子で先を続ける。
「ああいうのは特定の相手以外には見せてはいけない姿なんです。他の男の視界に入った、と感じたら即その場で止めないと。しっかり見せつけたりするのはトラブルの元です。変な気を起こした男につきまとわれないとも限りませんし、あれをごく私的な領域に付け入るきっかけと受け取る輩は世間に沢山います。…そういうところにあまりに無頓着なのを『隙がある』って言うんですよ」
喉渇いたなぁ。
いつもみたいにとりあえずコーヒー、って感じでもないし。自分で冷蔵庫から出して適当に水でも飲むかと腰を上げかけるとこちらの意図を察したらしく、わたしを軽く手で押しとどめて自らキッチンに向かう。アイスコーヒーがいいですか、と尋ねながらマシンをセットし始める野沢。帰宅するなり腹に据えかねたようにまくし立てっ放しだったけどちょっとは頭冷えたかな、と様子を伺いながらようやくこっちの考えを口にしてみる。
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