第21章 彼女の何もかも

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ともするとくっつきそうな目を懸命に開こうとしてしぱしぱさせた顔。なんだかすごく可愛くて胸がきゅっ、となる。こういう、今まで知らなかった彼女の表情が見られるとそのたび得した気分になる。俺って相当マニアックかもしれない。 二人の気持ちがやっと通じてからまだほんの二週間ほど。こうして予定が合う時は何とか都合をつけてなるべく一緒に過ごしているけど、長い時間を共にしていても何の違和感も感じない。思えばこうなる前から既にずっとそばにいる習慣だったし。そういう意味ではとっくにお互いの存在に馴染んでる。 だけどその一方で、今更ながら彼女にまつわる全てのことが新鮮に感じられて毎日沸き立つような思いだった。ひとつ一つはほんの小さなことだったりもするけど、日々新しい発見がある。何でもない普段通りに部屋で寛いでる時だって、そういえば俺ってこの子と付き合ってるんだな、もうただの友達じゃないんだとふと思い浮かぶと改めて信じられない思いでこっそり彼女を見返してしまう。 一日一日が長いようなあっという間なような。気がつけば既に二週間が過ぎていても、あまりに濃密に感じられた実感からするとまだそれしか経ってないのか、と呆れてしまうほどだ。 時間と空間があれ以来どこか傾いだように歪んでる。そんなわけで、何だか現実感のない傾いた世界の地面を踏みしめてふわふわと覚束ない足取りで歩く、そんな風に足が地につかない毎日だった。 「…そんな、…わけない」     
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