第21章 彼女の何もかも

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ずいぶん間があってから不意に途切れとぎれの反論が。てか。何に対しての反論? 自分がさっき何を言ったっけ、とそこから失念してる。頭をぐるりと思い巡らすまでもなくようやく覚醒し始めたらしき彼女が俺の首筋に顔を埋めたままぐりぐりと頭を横に振った。はっきり言ってめちゃめちゃくすぐったいことこの上なし。 「生まれたての、…仔猫。なんて。そんな…。ねこの方が…、ぜんぜん、可愛いよ。絶対」 そこか。俺は呆れて、でもきっぱりと否定して彼女の剥き出しな滑らかな背中を抱きしめた。 「いや、火宮の方が可愛い。そりゃ猫だって可愛いよ、でもさ。何たって俺はこの目で今君を見てるから…。火宮なんか自分を外側から見ることできないだろ。だから俺の方が正しいよ、当然」 「無茶苦茶な理屈だなぁ…、論破しづらいよ…」 俺の屁理屈を頭でなぞるように追ううちに少し思考がはっきりしてきたようで、まだ霞の残る目を上げて俺の顔を見た。 「逆にすごいぶす、って言われても反論できないと思うけど、その論拠で言うと。…んん、まあ。嬉しいけどさ。少なくとも武市の目にはわたしは猫よりいいって映ってるんだよね。わたしの基準ではそうじゃないとしても」 「そうだよ。猫だけじゃない、何よりいいよ。火宮が世界で一番…」     
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