第21章 彼女の何もかも

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もうまるっきり阿呆の会話だ。彼女の顔を両手で挟み、愛おしく頬ずりしてからそっと軽く口づける。目を閉じてそれを受けてるその耳に腑抜けた、二人の間でしか通じない甘い言葉を徒然に注ぎかけた。 「どんな犬より猫より。世界中の綺麗で可愛い生き物全部と較べても火宮には絶対敵うわけない。生き物だけじゃなく…、どんなUMAだって霊だって。天使も悪魔も。いるとすればだけど」 「もう。…思ってたよりずっと馬鹿っぽいこと言うんだから。武市って、意外」 ごめんね。 呆れた声ながらも腕に力を込めてきゅ、としがみついてきたところを見ると本気で嫌ってわけでもないのかな。とやや安堵して俺も服をつけないままの彼女をベッドの中でしっかりと抱く。 「半分まだ寝ぼけてるんだよ。だから自制心が働かなくて阿呆みたいな本心がだだ漏れてぽろぽろ出ちゃうんだ。聞き流してくれていいよ。…本当に思ってることだけど、確かに馬鹿みたいだな。俺」 「ううん…、いいの。実は嬉しいよ。だって、武市はいつも冷静でどっか距離置いて落ち着いてる感じだったから。こんな風に甘くでれてくれるなんて。…ちょっと、嘘みたい。わたしの妄想の中の出来事かな?って」 急に変なことを言い出す火宮。俺は関心を惹かれて尋ねる。 「それってどんなだろ。妄想の中の俺はどういう感じなの?実物より全然いい男で、優しくて格好いいみたいな?」 彼女はやけに真剣な顔つきで首を振る。     
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