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ぼけっとしてたけど、そうそう会費か?! そうだ、私も払わないと。バッグの中を急いでかき回していると手首をつかまれた。
んっ?
手首を掴んでる大きな手。これは……。 見上げるとやはりさっきも見た手の持ち主である三浦さんだった。
「真澄さんの分も立て替えときましたから。さあ行きましょうか」
三浦さんに手首をつかまれたまま居酒屋の個室を出る破目になった。
「ちょっ! せんぱーーーいーーー」
後ろから万里の声が聞こえた気がした。振り返る余裕がないほどにドタバタしていた。
三浦さんが「靴どれ」と聞いてきて、下駄箱にある自分が履いてきた平凡なブラックのヒールを指さした。こんなイケメンに見られるとわかっていたなら、もう少しマシなヒールを履いてきたと思う。
17世紀頃のイギリスを描いた映画に出てくる白い巻き毛が羊のようになった執事みたいに、私のヒールを出して床にきちんと揃えてくれた三浦さん。この状況は、まるで乙女が好みそうな夢の世界だった。かがんで、そのまま靴まで履かせてくれそうな勢いのイケメン執事に様変わりした三浦さん。
「履けますから!」
イケメンに執事まがいのことまでさせるのは、あまりにも傲慢だ。慌ててヒールにつま先を入れる。その間、私がこけないように三浦さんは、ずっと私の手を掴んでくれていた。嘘みたいな本当の話だ。
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