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「ちょっと」
えっ何……この…手。
立とうとしてテーブルについた私の手に自然に重ねられた手。
長い指、大きくて節は太い男の手を眺めた。
なに? これ誰の手?
イエローのシャツ、ネイビーのジャケットの袖口。視線を上げるとたどり着いた先にいたのは三浦さんだった。
一見華奢っぽいけど意外と大きな手をしてるんだなあ。ぼんやりとそんなことを思って、自分の手に重ねられた三浦さんの手を眺めた。
「待ってて、僕が送りますから」
ニッコリ笑って言うと三浦さんは天パーな益岡さんのところへ行き黒い長財布からお金を出して払っていた。
改めて今三浦さんに握られていた手の甲を眺めてみる。裏返して手の平も眺めた。
男子に触れられたのって何年ぶりだろう。 やだ、忘れるくらい遠い昔のような気がしてきた。
手だけは良く褒められる場所だ。『どうして、そんなに長い指なの? 』と高校の時、クラスメートの女子に聞かれたのを覚えている。
どうしてなのかは当の私にもわからない。ただ、私の中で唯一の自慢出来る場所なのは確かだった。
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