小銭の男

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「あのさ、3920円でいい?」 試してみた。値切れるかどうか。 「はあ?なんだって?」 大げさに溜息をつく三浦。 性格が悪い。普通ならいいですよって、明るく言うべき所だ。それを、たかだか80円に目くじらを立てるなんて。 「いいじゃない。80円くらいまけたって」 「なんで? 俺があんたに80円まけないといけないんだよ」 80円でがたがたと、本当にケチ男だ。本当なら奢りだっていいのに。 「くーーーー、わかったわよ。家まで行って取ってくるから、ここで待っててよ」 うるさい男は、自分から折れるってことも知らないらしかった。 悔しいが仕方ない。 ここで80円ばかりが無いからって、嫌味な三浦に借りを作るほど馬鹿な話はない。 お金の貸し借りは、なるべくしないようになと、お父さんに鹿児島を出る時に言われたっけ。 ケチ男のやることだ。 気をつけないと、闇金みたいにいつのまにか莫大な利子をつけかねられない。 今日のうちに返した方が無難だろう。
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