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「はあ? なんで俺があんたを待たないといけないんだよ」
散々文句を言われて結局、あのドけち男三浦は80円を家まで持ってこいとまで言ってきた。
「これから?」
「あたりまえ」
コンビニの外へ出て三浦は、冷たく言い放つ。
「お腹も減ってるのに? そうだ。なんかたべてからでもいい?」
「あほか、知るかよ。あんたのお腹の事まで」
ああ、そりゃそうですね。わかりました。
なんて冷たい男なんだろう。
三浦はマフラーを少し口の辺りまで上げてから、さげすんだように私を見る。
「なんか……とんだ厄日になったな」
「ほんと、いまだかつてないほどの厄日! たぶん、私のほうが厄日だから」
「私の方がって何はりあってんだよ。気がつえー女だな」
気が強くて悪かったわね! と叫びたかった。でも、我慢した。これでも、29年生きていく上で我慢する技をさりげなく身につけた。時には、人間我慢も必要だってことを学んだ。
「逃げんなよな」
去り際にまたしても可愛げの無い言葉を発した三浦。極悪人が誰かを脅す時に使うような台詞だ。
「ご心配なく。きっちり返しに行きますから」
極悪人に嫌味な位はっきりした口調で答えた。既に背中を向けた三浦の後姿を見ていたらコンビニの前に置かれた自転車に危うくぶつかりそうになった。
本当についてない。
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