あの人、怪しいと思います

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「途中で僕、転校しちゃったんですけど。  七重さん、僕の登校班の……  ……班長だったんですよね」  刹那は途中で、言葉をつまらせた。 「龍哉くん言ってました。  七重さんは、僕の初恋の人なんじゃないかって。  なんでわかったんでしょうね?」 と刹那は苦笑している。  おそらく、龍哉は、刹那の純粋な七重への想いを感じ取り、気づいたのだろう。 「何度も思い留まろうとしたのに。  二宮金次郎を見るたび、思い出してた。  憂いごとと言ったら、宿題と水泳の授業のことしかないような。  明日は、なにして遊ぼうかとか、そんなことしか考えてないような……。  そんな無邪気な七重さんの笑顔を何度も――」 「安達さん……」 と琳はそっと刹那の背に手を置いた。
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