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日曜日、今日はカラオケがなくて、暇だから、とか言いながら、琳の祖父、次郎吉が店に来ていた。
あれが琳のじいさんか、と思いながら、将生はカウンターから、その男を見る。
よく見れば、顔は琳と似ている気もするが。
全体的に、外国の絵本に出てくるおじいさんのような、ふんわりとした風貌で、受ける印象は琳とは全然違っていた。
「おー、せっちゃんじゃないかー」
次郎吉は、窓際の席に居た刹那の肩をパンパンと叩き、
「大きくなったな。
お前の父さんかと思ったよ。
そっくりじゃないか」
と言って笑っている。
「……時は流れてるんですよ、おじいちゃん」
と言う琳は側を通りながら、苦笑いしていた。
刹那が固まっていたからだ。
どうも刹那は父親が苦手なようだった。
側に来た琳が口許にやったお盆の陰から、こそっと言ってくる。
「安達さんのお父さん、政治家の安達賢吾らしいです」
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