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落ち着いたこのカフェにぴったりの、しとやかで美しい店主――
に、ぱっと見、みえるのだが。
名残り惜しそうに庭を見ながら、琳が言ってくる。
「イヌサフランも、オトギリソウもそろそろ終わりですもんね~」
……見事に毒草ばかりなのは何故だ、この庭。
いや、琳と自分が知っているのが、ほぼ毒草、というだけで、他の草木も植えてあるのだろうが。
なにせ、この店主、庭は業者に丸投げなので、客に、
「この花綺麗ですね~。
なんのお花ですか?」
と問われても答えられない。
「龍哉、なんで此処で本読んでるんだ。
家で読めよ」
「家は落ち着かないんだよ」
とこちらを見ずに龍哉は言う。
琳はただ笑っていた。
自分が龍哉に時折、嫉妬している風なのを見て、佐久間がよく、
「……宝生さん、僕より見境ないですね」
と言ってくるのだが。
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