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俺自身早くに父が他界し、母の実家に住むことになったのだが、母は働きに出ていて、家を空けることが多く、祖父と居る時間が多かった。
そんな祖父は、父代わりに俺を育ててくれたのだが、年代の事もあり、なかなか厳しい人で、『人前で歯を出して笑うな』『泣いては相手に下手にみられる』等厳格な教えを俺に説いた経緯がある。
お陰で顔にも出ないが、感情の浮き沈みも少ない性分になってしまった。
そんな折り、先日の彼女の話しだ。
『先輩はそのまま笑っていてください』
今の今まで、彼女に言われたような感情が自分の顔に反映されているとは思ってもいなかった。それは一体どういう事なのであろうか? 周りの人はそんな事は一切言ってはくれない。ただ一人彼女だけがそう俺に言ってくれる。
(それは…… 些細な事でも俺を見ていてくれたから?)
「はぁああ」
何という自惚れ。だいたい今はどう思っているかなんてわからない。あれだけの仕打ちをしても尚、俺の事をどう思っているかと考えるのは、どうかしている。
ただ…… 自然と彼女に視線が行ってしまう。今も…… 彼女が笑えば胸がどことなく軽くなる。今までにない気持ちの揺れを、自分自身、驚きでもあり楽しんでもいるのだ。
(それに今日の放課後 風紀委員で彼女に合える)
そう思うだけで胸が熱くなるのだ……
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