後輩の彼は先輩でした。

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後輩の彼は先輩でした。

 「うん! そうだねっ」  愛想笑い。適当な相槌。相手が求める反応を素早く察知し、それを実行する。これが、葉月律(はづき りつ)の日常だった。  こんな上っ面の関係、誰が見たって馬鹿らしく思うに違いない。  でも、相手に合わせるだけの関係でも、だれが見たって馬鹿らしい関係でも、葉月にとっては、失うわけにはいかない関係。  なぜならば、女子の間で孤独になることは何よりも恐ろしいことだから。  (下校まであと三時間……! 頑張れ私……!)  自分で自分を鼓舞し、その後も相手に合わせ続けてようやく下校時間を迎える。  「じゃあまた明日!」  みんなにそう告げ、教室を後にする。  人間関係という名の鎖から解き放たれた葉月の足取りはとても軽快だ。  そのステップを踏むかのような軽い足取りで、学校から、まあまあ距離のあるある場所へと向かう。自分が自分でいられる場所。
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