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 観覧車を降りた彼女と僕は、遊園地の中をあてもなく歩く。池の淵を覗き込んだ彼女は、何もいないと呟いた。  僕の視線は水中まで届かなかった。池の隣にメリーゴーラウンドがあって、水面に踊る光と影に目を奪われていたからだ。電飾に彩られた屋根の下、跳ね回る音楽に合わせて上下する馬たちは、なぜかとても楽しそうに見えた。ぐるぐると同じ場所を回り続けるだけなのに。 「私が見たかったのはこれじゃない」
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