祭りのあと

1/2
前へ
/17ページ
次へ

祭りのあと

「狐の神様、いますか?」  お祭りが終わった次の日。ぼくは、神社を訪れた。 神社や商店街は、もうキレイに片付けられているものの、昨日のお祭りの余韻がなんとなく残っている。 「ケイタ君。お疲れ様でした。まさか、あんなに人が来てくれるとは思いませんでしたよ」  狐の神様が神社の裏からひょいっと現れる。狸も一緒だ。 「なぁ、あの紙芝居、オレも出てたよな!なかなかイケメンに描いてくれてたじゃないか!」  狸は、紙芝居に自分が登場したことが嬉しかったらしく、ご満悦だ。ということは、この2匹もどこかで紙芝居を見てくれていたのだろう。 「お祭りなんて、もうずっと行われていませんでしたから。また皆さんの楽しそうな顔を見ることが出来て、本当に嬉しく思います。ありがとう」  お礼を言う神様に、ぼくは首を横に振った。 「ぼくこそ、ありがとうございました。お祭りやろうなんて、神様が話してくれなかったら、全然思いつかなかったと思います。新しい友達も出来たし、みんな楽しんでくれて嬉しかったし、神様のおかげです」  お祭りは大成功だった。町の人達はぼく達の手作りのお祭りを楽しんでくれた。高校生人とかにはきっと物足りないお祭りだったと思うけれど、実は商店街の人達が、ここぞとばかりにお祭り記念商品を売り出していたらしく、久しぶりに商店街を巡ったという人もいた。 「そうだ。神様、この鈴お返しします」  ぼくは、ズボンのポケットから素直になれる鈴を取り出し、神様に渡した。 「ぼく、もっと色んな人とお話してみようと思いました。タケシ君もとみばあも、怖い人達かなって思ってたけど、全然そんなことなかった。みんな、優しい人達だったから」  神様はぼくから鈴を受け取ると、細い目を更に細めて笑った。 「素敵ですね。ケイタ君。やっぱりあなたにお手伝いしていただいてよかった。これにて、神様のお手伝いは終了です」 「もう、神様達には会えなくなっちゃうんですか?」  せっかくお話出来たのに。ぼくは寂しくなって俯いてしまう。 「私達はずっとここにいますよ。声は聞こえなくても、ここからずっと皆さんを見守っていますからね」 「オレもいるぜ!」 「じゃあぼく、神様が寂しくならないように、また遊びに来ます」  そう言うと、神様は嬉しそうに一声鳴いた。 
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加