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祭りのあと
「狐の神様、いますか?」
お祭りが終わった次の日。ぼくは、神社を訪れた。
神社や商店街は、もうキレイに片付けられているものの、昨日のお祭りの余韻がなんとなく残っている。
「ケイタ君。お疲れ様でした。まさか、あんなに人が来てくれるとは思いませんでしたよ」
狐の神様が神社の裏からひょいっと現れる。狸も一緒だ。
「なぁ、あの紙芝居、オレも出てたよな!なかなかイケメンに描いてくれてたじゃないか!」
狸は、紙芝居に自分が登場したことが嬉しかったらしく、ご満悦だ。ということは、この2匹もどこかで紙芝居を見てくれていたのだろう。
「お祭りなんて、もうずっと行われていませんでしたから。また皆さんの楽しそうな顔を見ることが出来て、本当に嬉しく思います。ありがとう」
お礼を言う神様に、ぼくは首を横に振った。
「ぼくこそ、ありがとうございました。お祭りやろうなんて、神様が話してくれなかったら、全然思いつかなかったと思います。新しい友達も出来たし、みんな楽しんでくれて嬉しかったし、神様のおかげです」
お祭りは大成功だった。町の人達はぼく達の手作りのお祭りを楽しんでくれた。高校生人とかにはきっと物足りないお祭りだったと思うけれど、実は商店街の人達が、ここぞとばかりにお祭り記念商品を売り出していたらしく、久しぶりに商店街を巡ったという人もいた。
「そうだ。神様、この鈴お返しします」
ぼくは、ズボンのポケットから素直になれる鈴を取り出し、神様に渡した。
「ぼく、もっと色んな人とお話してみようと思いました。タケシ君もとみばあも、怖い人達かなって思ってたけど、全然そんなことなかった。みんな、優しい人達だったから」
神様はぼくから鈴を受け取ると、細い目を更に細めて笑った。
「素敵ですね。ケイタ君。やっぱりあなたにお手伝いしていただいてよかった。これにて、神様のお手伝いは終了です」
「もう、神様達には会えなくなっちゃうんですか?」
せっかくお話出来たのに。ぼくは寂しくなって俯いてしまう。
「私達はずっとここにいますよ。声は聞こえなくても、ここからずっと皆さんを見守っていますからね」
「オレもいるぜ!」
「じゃあぼく、神様が寂しくならないように、また遊びに来ます」
そう言うと、神様は嬉しそうに一声鳴いた。
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