神様のお手伝い

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 7月のある日曜日。ぼくはお小遣いを握りしめて、商店街の駄菓子屋に来ていた。 まだ小学校3年生のぼくにとって、駄菓子を買うのはいつも真剣勝負だ。 よし。しばらく悩んでから、10円のお菓子と30円のお菓子を1つずつ手にすると、それをカウンターの中に居る、とみばぁに持っていく。 とみばぁは、昔からずっとここで駄菓子屋をやっているらしく、しわしわのおばあちゃんなんだけど、いつも無表情でちょっと恐い。 「とみばぁ」 「43円だよ」  ぼくが呼ぶと、にこりともせずにそれだけ返ってきた。やっぱりちょっと恐い。 ぼくはお金をとみばぁに渡して、駄菓子を握りしめてお店を出ようとした。そのときだった。 「お待ち」  いつも無言で見送るとみばぁが、珍しく声をかけてきた。 くるっと振り返って、とみばぁを見ると、とみばぁは小さな紙をぼくに渡した。 「とみばぁ、これなに?」 「商店街で福引きやってるんだと。それで1回引けるから、引いておいで」  紙を見ると、小さな黄色の紙に、福引券、とだけ書いてある。 「福引きって、どこでやってるの?」 「店を出りゃわかる」  そう短く答えると、とみばぁはぼくから視線を外した。もう話す気は無いらしいな、と思い、ありがとうと小さく言って、ぼくはお店を出た。
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