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神様のお願い事
商店街の奥の神社は、福引きの場所からそう離れてはいなかった。セミ達がミンミンと鳴いている。
神社の入り口は小さな広場のようになっていて、ぼくは真ん中に立つと辺りをきょろきょろと見回した。
「誰も…いませんか?福引きで、何か当たって。ここに来てって言われたんですけど…」
おそるおそる声をかけてみる。すると、どこからともなく声が返ってきた。
「ケイタ君ですか?」
名前を呼ばれたぼくはびくっとして、もう1度辺りを見回した。やはり誰もいない。
まさか、本当に神様…と思い始めたとき、賽銭箱の後ろから、何かがシュっと現れた。
「え…狐?」
それは、本物を見るのは初めてだったけれど、テレビとかで見たことがある狐だった。
狐はトコトコとぼくの方へ歩いてくると、目の前で立ち止まる。
「こんにちは。この神社の神様をしております。狐です」
き、狐がしゃべった…!
ぼくは心臓がドキドキする音を感じながら、何とか返事を返そうと、頭を下げる。
「ケ、ケイタです。あの、神様のお手伝い権っていうのを貰ったんだけど…」
「左様。ケイタ君には、私のお手伝いをしていただきたいのです。お願い出来ますか?」
神様の申し出に、まだ現実感が持てず固まっていると、何かが神社に入ってきた。
「えっと…犬?」
「狸だよ!たーぬーき!」
そこに居たのは、犬のような丸っこい動物だった。肩から謎のひょうたんのような入れ物を掛けている。
「狸までしゃべった…あれ?今の声、もしかしてさっきの、福引きのお兄さん?」
「子供っていうのは、やっぱり鋭いな!あれはオレが人間に化けた姿さ!」
狸って、本当に化けるんだ…。
「もしかして、狸さんも神様なの?」
「いいや、オレはただの狸さ!友達として、狐のことを手伝ってるだけ」
ただの狸がしゃべるわけないじゃないか!と言いたかったけれど、言葉をぐっと飲み込んだ。
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