21人が本棚に入れています
本棚に追加
「それで…お願いというのはですね。この神社に来る人を増やしてほしいのです」
狐の神様はそう言うと、ぼくの目をじっと見た。
「私はこの神社の神様で、この町の商店街を見守っているのですが…近年人が減って、私の力も小さくなってしまっているのです」
「神様の力は、元々ここぞ!ってときじゃなきゃ使っちゃいけないことになってるんだ。人間が神様頼りになっちゃうからな」
やれやれ、と言いながら、狸は肩を竦める。
「今の私では、お天気を少し操ったり出来るくらいで…町に何かあっても、悪い人に罰を与えることもままなりません。しかし、また商店街や神社に人が集まるようになって下されば、私も力を取り戻すことが出来るのです」
そう言うと、狐の神様は小さな鈴のようなモノを取り出し、ぼくに手渡した。
「この鈴は、ケイタ君の助けになればと用意しました。人の心を素直に出来る鈴です」
まじまじと手にした鈴を見るが、見た目には少し古ぼけた、普通の鈴にしか見えなかった。
「…ぼくに出来るかな、そんなこと」
どうしたら人が来てくれるかなんて、ぼくにはまったく思い付かない。
「大丈夫ですよ。ケイタ君なら、きっと出来ます。大変なことをお願いしてしまいましたが、お手伝いしてくれますか?」
困ったように俯くぼくに、神様は優しい声でそう尋ねた。
ぼくに本当に出来るのか。少し迷ったけれど、神様が困っているのなら、助けてあげたいと思った。
「ぼく、やってみます。うまく出来るか、わからないけど」
「ありがとう。私達も、ケイタ君のことを見守っていますよ」
狐の神様は嬉しそうに、天に向かって一声鳴いた。
最初のコメントを投稿しよう!