第1章

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「やっぱり今日はやめておこうかな」 「あんたさー、もっと気軽に考えて、見るだけみてみれば」 「あ・・そうだよね」 エレベーターの前に立ち、横の案内看板で階数を確認する。 そうだ、見るだけみてみないと―― ミッコは上に向いた矢印のボタンを強く押した。 「そんなに強く押さなくても、何を緊張してるの」と友達は笑う。 「あ・・そうだよね」 「さっきから、そればっかりだよ」とまた笑われた。 1FのLEDが点灯してエレベーターの扉が開いた、二人はエレベーターに乗り込み3Fのボタンを押した。 3階に到着して扉が開くと、目の前がその店の入り口になっている。扉のすぐ目の前が入り口であったことで、少し和らいでいた緊張感がミッコをまた襲った。 扉は自動ドアであるようだが今は電源が落とされて開いたままの状態であるようだ。 店内はまだ照明が明るい。ミッコはその開けっ放しのドアから中を覗いてみた。 ドアの左側の先にステージが見える。誰かがそのステージの上でしゃがみ込み何か作業をしている。 「あの、何か?」ドアの右側から声がした。 ミッコが振り向くと、そこには長身で引き締まった身体つきの日焼けした顔にアイシャドウをした男性が立っていた。 「あっ、すみません、あの、さっき電話したものですけど・・・」 「あー、オナベちゃん?」とアイシャドウをした男性が納得したように答えた。 「はい、それで面接に来たんですけど・・・」 「さっき電話を受けたのは私よ、じゃあこちらへどうぞ」とアイシャドウの男性はミッコと友達をステージ前のボックスシートに案内した。 どうぞ座ってと促されて二人はボックスシートに腰をかけた。 「そちらの方はオナベちゃんでは無いようね」とその男性が聞いた。 「あの、友達です、僕がこっちに来て分からないことが多いので今日は付き合って貰ってます」とミッコが言うとその友達が緊張したように頭をさげた。 その男性を見て友達も少し緊張しているようだった。 「あなた何処からきたの?」 「小樽から来ました」 「あら、私も北海道よ!」とその男性が目を見開いた。 「あっ何処ですか?」ミッコは緊張が解けるように聞いた。 「私は札幌よ」 「美穂ちゃんも生まれは札幌だよね?」とミッコが友達に同意を求めると友達はうんうんと頷いた。友達も出身地の話で緊張が解けたようだった。
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