第1章

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その涼子はクラブが終わって「OLIVE」に来てから2時間ほど経っていたので、もう朝に近い時間になっている。 「ウッセーバーローてめー!」 「涼ちゃん酔い過ぎだよ!」 「イヅミはいーから、イヅミはいーから」 「いっちゃん、僕も帰り一緒に涼ちゃんを家まで送ろうか?」 「うん、お願い」 「私は帰らないから!だいたい、ウミの踊りはまたレベルが落ちてるんだよー」 「いや今回はレッスンにあまり参加できなくて」 「私、今までウミにいくら注ぎ込んでると思ってるの!あれなら、明日から私が代わりに踊ってやるから!」 「人前に出ると以外に小心者なんだからステージなんて無理だよ」と友達のいづみが小声で囁く。 「ウッセーバーローてめー!聞こえてるんだよー」 「ごめん、ごめん、じゃあ涼ちゃんそろそろ帰ろうか」 「・・・」 「あれ、あっ、寝ちゃってるわ」 翌日午前 涼子のマンション 飼っている子犬に鼻を舐められて、涼子は目が覚めたが、まだ完全に酔っていた。 この状態で起きると胃の痛みに襲われそうなので、無理に目を閉じてまた眠りに入った。 その日、起き上がることが出来たのは午後8:00を過ぎていた。 例によって胃が痛い、でも胃が痛いことには慣れている。 シャワーを浴び、髪を乾かしながら昨夜のことを思い出していた。 服を着て、家を出る。タクシーを拾い、その日は10時に入店した。 「おはよう」と店のマネージャーに挨拶する涼子。 「大丈夫?」とマネージャーが聞いた。 「意外と大丈夫、不思議なくらい」 昨日の酔い方だと店に来れないだろうと思われていたらしい。 胃の痛さと体のだるさはひどいものだったが反面、麻痺しているようにも感じられた。 翌日午前0:00 ショーパブ「OLIVE」店内 キャッシャー前でショーの衣装を着けたウミがパールと話している。 ウミとパールは涼子のお気に入りで、涼子が「OLIVE」に遊びに来ると必ず二人が接客をしていた。 ウミはオナベ、パールは店のマネージャーであり綺麗目なホモである。 その店は横浜で人気のニューハーフとミスダンディによるショーパブで、週末を問わず いつも混んでいた。営業時間は午後9時から翌朝5時迄の為、午前0時を過ぎると周辺の 同業者――水商売の人々-たちも店が空けたあとのアフターとして遊びに訪れる。 「パールさん、昨日の涼ちゃん凄かったすねー、なのにパールさんはいつも冷静に対処
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