第1章

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スタッフ紹介が終わり、ステージから自分――自分の姿をした――が自分の方へ近づいてくる姿はなんとも不思議な光景だった。 「ちょっとあんた誰?」と「ウミになった涼子」が聞く。 「僕、ウミです、まさか涼ちゃん?」と「涼子になったウミ」が答えた。 「そうだよ、何なのこれ!」 お互いが目の前にいる自分を確認した。 「何で私がよりによってウミになるの?この筋肉質で汚い足、耐えられない!」 「そんなこと言わないでください」 「てか、その膝擦りむいてるジャン!てか、鼻も赤くなってるジャン!私の体に何したの?!」 「だってこんなヒール履くから転んじゃいました」 「もう、信じられない!」 「僕だって信じられないー」 少し離れた席に着いていたパールがいつもとは逆の二人のやりとりを不思議そうに眺めて 呟いた。 (あら?ウミが涼ちゃんを叱っているわ・・・) 午前5:20タクシー内 「とにかく今日は私の家に来て」と「ウミになった涼子」が切り出した。 「はい、とりあえずそうしましょう」と「涼子になったウミ」が答える。 お互いが状況を受け入れたのか少し落ち着いてきたようだった。 というより冷静になるように努めた。 タクシーが涼子のマンション下に着き、二人でマンションの中に入った。玄関のドアを開けると、涼子が飼っている子犬が出迎えてくれた。 子犬は涼子のところに来てくれたが、よく考えるとウミの姿をしている自分になつくこともおかしいことに気が付いた。 でも、それよりこれからどうすれば良いかを考えることのほうが先決に思えた。 だが、自分の姿をしたウミの化粧を落としてあげながら考えてみたものの、良い考えなどあるはずが無かった。目の前にいる自分の傍にいる他は無い。 もう二人はしばらくの間、運命共同体なのだ。 先ずは明日をどうすればいいのかを考えてみることにした。 「ウミ、明日、私は高井さんとご飯の約束があるの、こんな状態だからキャンセルしたいけど、先週も都合付かなかったから明日キャンセルしたら、機嫌損ねちゃうからなんとかしなきゃ」 「じゃ僕が高井さんとご飯に行けばいいんですね」 「そうだけど、私も付いて行く」 「心配なんですか?大丈夫ですよ」 「駄目!」 「大体、言葉使い気をつけて、ウミはワタシ、私はボク」 「それから、そ-すねッとか、えーッとか連発しないで」 「わかったわッ」 「それから、甘えたしぐさとか甘えた言動とかしないで、あたしが甘えたら違和感ある でしょ?」
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