寄り添うように

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 日曜の朝、早起きして出かける準備をする。普段は休日に一人で出かけることなどないので家族に不審に思われたけれど、友達と約束をしたと嘘を吐いて、車を走らせた。今日は公園内で何かのイベントがあるようで、駐車場は混んでいた。警備員の誘導に従い、駐車する。  あのベンチに行こうと決めていた。あそこに行けば、また会える気がしていたから。駐車した場所が池とは反対方向だったので、先日よりも歩く距離が長い。多くの人とすれ違うけれど、誰とも挨拶は交わさなかった。人が少ないと誰彼構わず挨拶を交わすのが当たり前なのに、人が増えた途端、知らない人に挨拶などしない。それが、当たり前なんだ。  人間は一箇所に集まりすぎると良くないのかもしれない。自分よりも他人ばかりを気にしてしまう。学校も会社もおなじだ。本当はどうでもいいことなのに、そんなことに気を取られてしまって、本来の自分を見失う。  ようやく、池が見えてくる。それとほぼ同時にベンチが見えてきたけれど、そこには知らない人たちが座っていた。誰かが座っているとわかると、近づくことさえ拒まれたような気がした。 「残念……」  私は独り言を呟きながら、イベント会場へと向きを変えて歩き出した。
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