優しい風

寄り添うように

　私とレンはイベント会場から少し離れたベンチに二人で座っていた。さっきの男の子から感じた不思議な感覚が、まだ忘れられずにいた。

「ウタノ、あれからどうですか？　少しは、楽になりましたか？」

「はい……」

　レンに会いたかったのに、私は、何処か上の空で、ぼーっとしている。せめて、あの子の名前くらい聞いておけば良かったかもしれない。近所に住んでいるのだろうか、この公園にはたまに来るのだろうか………そんなことばかりが頭を駆け巡る。

「……ウタノは、運命とか縁を信じますか」
「そんなもの、わからない」

　視線を感じてレンの顔を見つめる。レンは微笑んでいなかった。そして私の視線から逃げるように、視線を逸らした。