寄り添うように

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「すみません、僕は悪い奴なのかもしれない。あの子にウタノさんを取られてしまうような気がして、つい引きとめてしまいました」 「レンは、あの子を知っているの?」 「そうですね……知っているけれど、知らない子です」  話をはぐらかされたような気がして、私は少しムッとした。それに"取られてしまう"って、私はレンの彼女でもなんでもない。ただ一度会って話しただけ。それだけじゃないような気はするけれど、記憶にあるのはそれだけ。 「そうですね、間違いありません……」  小さく呟くレンの声が、何故か胸に刺さるような気がした。でも、私にはレンの心の声は聞こえない。レンは、私に何か隠している? 何か言いたいことを……言わないでいる? 「そのとおりです。何も知らないウタノに、本当は声をかけるべきではなかった。僕は……」  私は何かを言いかけたレンの手を強く掴んだ。男の人らしいごつごつした手に少しだけ緊張するけれど、レンは、それよりも驚いたような顔をして私をじっと見つめた。 「行きましょ、さっきの子を探すの。まだきっと、この公園のなかに居るはず!」 「えっ! いや、そういう意味ではなくて……!」 「知らない。私はレンのことも、さっきの子のことも何も知らない……けど、きっと何かあるのよ。だから、それがどんなものか会って確かめてみたいの」 「あっ、いや、ウタノ!」  私はレンを引っ張るようにして走り出した。無駄に重たい鞄とパンプスのヒールが邪魔をする。けれど、何かを目の前にしてグズグズしているような、この、もやもやした気分が嫌だった。
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