手を離して

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「私は、運命とか縁を信じてる。縁があったからレンに出会えた。だからそれは偶然ではなく運命だと思う」  レンは表情を曇らせると、私の手を握る力を弱めて、ゆっくりと手を離した。 「それは、きっと間違っていません」  レンの視線の先に、さっきの男の子たちがいることに気がつく。あからさま過ぎる、レンの言動に私はどうしたらいいのかわからなくなる。 「行ってください、ウタノ。僕のことは良いですから……僕は、風のようなものですから」 「……変なことを言うのはやめて」  しばらく見つめ合った後、私は、レンの眼差しに突き動かされるように、二人の男の子の方へと歩き出した。後ろから風が吹いてきて、髪が乱れ、スカートの裾が音を立てて揺れた。手櫛で髪を整えながら、小さく溜め息を吐くと、何故か、振り返ってはいけない気がした。
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