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私は何故、振り返ったのだろう……何かを忘れている……?
「ね、おねーさんも座りなよ」
上目遣いでにっこりと笑う男の子に視線を戻すと、同じようににっこりと微笑み返した。もうひとりの男の子が、どうぞ、と目で合図をしてくれたけれど、男の子たちの間に座るのも気が引けて、私は座らずに少し笑って誤魔化した。
「彼氏じゃなかったんだ、さっきの人。お兄さんかな?」
「さっきの人って……?」
「オレが声をかけたとき、おねーさんの後ろにいた人だよ」
「えっと……、ごめんね、なんの事かわからない。私はひとりで公園に来たの、今日は知り合いとか友達にも誰にも会っていないんだけど……」
男の子は、突如として真顔になると私をじっと見つめた。何か変なことを言ったかと、こちらまで真顔になって戸惑う。隣の男の子も少し首を傾げると、私が歩いてきた方を指差した。
「あそこで、誰かと話していただろ?」
「えっと……?」
私は再び後ろを振り返った。歩いている人がいるけれど、知り合いはいない……いるはずがない。だって、私はひとりでなんとなく、今日はこの公園に来た。たまたまフリーマーケットでこの子に声をかけられた。
それから私は見失ったこの子をひとりで探していた。
「……あぁ、そういうことか」
男の子たちは二人で顔を合わせて何かを察知したようにニヤリと笑った。
「ね、おねーさん。この辺に住んでるの? オレたちとお友達になろうよ」
「ええ……もちろん。そのつもりで探していたの」
私は、二人の男の子に笑ってみせた。
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