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駐車場の隅にさっさと車を停めて、貴重品の入った鞄だけを持つと私は公園の通路に出た。
平日の朝8時過ぎ。体力づくりのためにジョギングしているおじいさんと、管理人のおじさんとすれ違う。あきらかに見慣れない顔である私にさえ、笑顔で挨拶をしてくれた。私も笑顔で「おはようございます!」と挨拶をした。笑顔に笑顔で返すのは気持ちが良い。
私は公園の中心に広がる池を目指す。少し離れたところを、水鳥がヨタヨタと歩いている。私と同じで、池を目指しているようだ。
空を飛べば早く池に行くことができるだろうに、でも、この水鳥はそれをしない。大きなお尻を左右に揺らし、歩くのには適していない体で……
「急ぐ意味など無いのですよ。それに空を飛ぶことには、かなりエネルギーを使いますからね。貴女も走ることはできるけれど目的地まで歩いているではないですか」
突然、背後から男の人の声が聞こえて振り返る。水鳥を眺めていたけれど、ゆっくりと私に向き直り、穏やかな表情を見せた。
「おはようございます」
爽やかな挨拶だ、そう思った。
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