公園で会ったあの人

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「お、おはようございます」  私はその知らない人に挨拶をして、まじまじとその人を見つめてしまった。30代くらいの優しそうな顔をした人だ。 「あっ、突然話しかけてごめんね。水鳥を見つめる若い人なんて、変わってるなと思って、つい」  どうやら私は話したことも無い人にすら”変わり者”と思われるようだ。何が可笑しいのか、その人はくすくすと笑っている。 「いえ、別に。確かにそうですよね。わざわざ空を飛んで池に急ぐ必要なんてない」  さっき横を歩いていた水鳥が、池にたどり着くとスイスイと他の水鳥のところに向かっていった。歩くことも、空を飛ぶこともできる。そして、水の上を気持ちよさそうに滑る水鳥のほうが、私よりもずっと自由に行きたいところに行ける。それが純粋に羨ましい、そう思った。 「貴女はどこに向かっているのですか」  いつの間にか笑うのをやめた男の人は、真顔で私に質問をした。不意に見せられたその表情に仄かな違和感を抱きつつ、私は大して考えもせずに「えっと」と言ってから、質問を頭の中で反芻した。
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