公園で会ったあの人

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「誰もが生きづらい社会を、みんなで作り出している、おかしな話です」  そう感じているのは私だけだと思っていた。他の人は学校や職場で楽しそうに話して、それがホントウの自分のように振る舞っている。社会のなかの自分という虚像を作り、自分自身の本心というものを隠す。  自分の本心を曝け出す私のような希少種は、ただの"変わり者"として避けられるか、叩かれる。 「どうしてウタノはそれでも自分を変えようとはしなかったのですか」 「……私のことを理解してくれる人がいつか現れると思って……」  そこまで言うと、私は下を向いた。そう思っていた自分が、あまりにもバカだと思った。  自分でもわかっていた気がする。そんな人はいくら待っても現れないんだ。私の気持ちがわかるのは私だけだ。レンのように心の声が聞こえる人なんていない。  私のことを好きだとか、親友だとか、愛していると言った人たちはみんないなくなった。友達は環境が変われば疎遠になるし、もっと魅力的で付き合いやすい人などたくさんいる。私のような、話ひとつ合わせることもできない奴は、簡単に捨てられる。  その程度のものだった……そう思っていたけど違う。私が悪いんだ。私が、そう言ってくれた人の気持ちに応えることができなかったんだ。  
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