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「ウタノ、貴女は確かに間違っているかもしれない」
そんなのわかっている。この社会で必要なのは他と馴染まない個ではない。そういった職業もあるけれど、私は、そんな個性を活かせる職業に就けるほど秀でた人間ではない。
「でも、だからといって貴女が自信を失くす必要はないし信念を曲げる必要もない。ただ少しだけ、寄り添うように、周囲の人や相手の人を受け入れるようにしてみたらどうかな……?」
「寄り添う……受け入れる……?」
顔を上げると、優しく微笑みながら、レンが頷いた。
「大丈夫、貴女は何も変わらない」
会ったばかりなのに、私の本心を見透かしたような笑顔に少し苛立つ。そう思った途端、レンがくすくすと笑い出した。
「本当にウタノは素直ですね」
「えっ……あ……」
私は頬が赤くなるのを感じて、再び下を向いた。"苛立つ"気持ち、それもレンには伝わってしまったのだと恥ずかしくなった。
レンは、私の探していた"私のことを理解してくれる人"なのかもしれない。とても話しやすいけれど、ある意味とても話しにくい。
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