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しかと道照る、一等地
ここは巽条橋という町の8丁目。
駅からも遠く、近くの商店街は寂れ、堤防の築かれた川しかなく、周りにこれといって何かがあるというわけでもない。
立地的にもあまりいいとは言えないこの寂れた町に光希坊っちゃまがやって来たのは、半年前の事でした。
かつては、大きなビルがたくさん立ち並ぶ都会のど真ん中での生活。
そこに住む資産家で大金持ちの富永家のご子息である光希坊っちゃまは、思う所あってその実家を飛び出し、あろう事かこの町で古いアパートを借り、一人暮らしを始めたのです。
ご家族を初め、周りの人たちはさぞ驚いたでしょうね。
将来を約束されたエリートへの道を捨て、家を飛び出した事。
次にその飛び出した先が、こんな場所であった事。
誰もが嘲笑い、引き止める人もあったでしょう。
だけど光希坊っちゃまはそれをはね除け──というほど気概のあるものでもなく、のらりくらりと躱すようにして少ない荷物を纏め、ここへと辿り着いた──
そう、あなたがここへやって来たのは、ちょうどそんな感じでしたね。
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