しかと道照る、一等地

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「猫……でしょうか」 「いや、違う。もっと足が長くてすらっとしてたような……」  言い掛けて、光希坊っちゃまは月の神秘に魅入られたように呟きます。 「もしかして、ウルル……?」  光希坊っちゃまと喜子さんはハッと顔を見合わせました。  しばらく無言で見つめ合った後── 「ぷっ、」  どちらからともなく吹き出しました。  川沿いの道に、二人の笑い声がこだまします。 「そんな、まさかね」 「いえいえ、でも……」  喜子さんは、目尻に滲んだ涙を拭いながら言いました。 「白い動物は神様の使いだと云われています。ですからあるいは、本当に──」  ──本当に、ウルルが私たちに会いに来てくれたのかもしれませんよ──
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