しかと道照る、一等地

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「またそのような言い方をされて……。ご実家を出ていかれる時もそうでした。『僕はもう十八だし、世間の十八歳が家を出て自活するなんてザラじゃないか』と」  喜子さんは半年前の光希坊っちゃまの言葉や様子を思い出しながら、ぽつりぽつりと語ります。 「それから半年もご連絡を一切寄越してくださらず、やっと便りを頂けたと思ったら……」  と、喜子さんは自分のバッグを探り、一通の葉書を取り出しました。 「家政婦センターに私宛てに届いた一通のみ。しかも今住まわれているこちらの住所と『一応何とかやってます。家族の誰にも言わないで』のお二言だけで……」  そう言って、葉書を見つめます。  どこか釈然としない様子の喜子さんを見て、光希坊っちゃまはふふっと笑います。 「生活が落ち着いたからね。連絡が今更になったけど」 「坊っちゃまがお出になられてからの半年間、本当に心配だったんですよ?一体今までどう過ごされてたんですか?」 「うん」と曖昧な返事をして、光希坊っちゃまもちゃぶ台の前で腰を据えます。  やはり育ちがいいのでしょう、きちんと正座をし、背筋をピンと伸ばしています。
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