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彼は外面がいいもんだから、その外面のよさのせいで、人がすぐ好きになってしまう。でも彼は自分がそこまで大したことはないって思っているもんだから、なかなかままならないもんだよなあと思う。
それに、私は彼のその性格を知っているせいで、彼の好みも知っている。
「俺は、俺が大人げなくてもかまわないって思っている子がいいんだけどなあ……」
彼が一度ものすっごく好きだった人を知った瞬間、私の失恋は確定したのだ。
……彼が一度熱を入れたのは、小学校の先生。若い先生だと舐められて、真っ向から学級崩壊になりそうだったのを、光くんが根回ししてクラスのやんちゃな男子を抑え込んだのを見て、思い知った。
私じゃ彼をどうすることもできないと。
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幸い、彼の本質は私以外誰も気付かなかったせいで、今のところ光くんは「光源氏」「女子をすぐにフる」というレッテルが貼られてしまって、友達から「ひどい奴だね」と言われる程度で、なにも起こらなかった。
そのことに私はほっとしていた。
光くんに年上の女の人がアプローチをかけてしまったら、きっと私の恋は今度こそ終わってしまうからだ。
でも、そんな日は脆くも崩れ去った。
「今日から二週間お世話になります、教育実習の紫まなかです。どうぞよろしくお願いします」
似たり寄ったりな黒いスーツに白いブラウス。ひとつにまとめた髪に、表情は快活。
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