5人が本棚に入れています
本棚に追加
「しないよ。そんなの先生に失礼だ」
「どうして?」
「……先生と生徒じゃ、どうにもならない」
そりゃそうだけれど。せめていい生徒になりたいって印象に残ればいいのに。私はそう歯がゆい思いで見ていたけれど、同時に安心もしていた。
光くんは外面が大変いいものだから、きっと外面を気にしてなにもなく終わるだろうと、そう安心しようとしていたけれど。
慢心は敵だ。彼の外面のよさと計算高さを、もうちょっと考えればよかった。
そして、それは下校前のホームルームで唐突に起こった。
「先生、活動費が足りません」
「ええ……?」
うちの学校では、レクリエーション代をひと月ごとにクラスで集めて、そこからお金を崩して使うというスタンスを取っている。
それのお金の回収をしているのは担任なんだけれど、今回はお金の徴収時期と教育実習期間が重なったために、紫先生が回収をしていたんだけれど。それを集めて計算していた会計委員の子が言ったために、誰がお金を出していないのかで大騒ぎとなってしまったのである。
「活動費を提出してない子は?」
「全員提出してます。私、全員分の封筒の確認しましたから」
「だとしたら……お金がどこかに落ちた?」
「落ちてないです」
最初のコメントを投稿しよう!