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紫先生が去っていくのを見ながら、軽く手を振っている光くんに私は「ねえ」と声をかけた。
「ああ、千鶴ありがとう。おかげで上手くやれた」
「……そう、よかったね。おめでとう」
「覇気がないなあ」
「ねえ、光くん。これは私の妄想だけれど、聞いてくれる?」
「え、なに?」
「会計の子が何度計算してもお金が合わなかったの、あれは原因、光くんがお金をわざと少なく入れていたからじゃないの?」
活動費を入れた封筒を一通一通確認していたら、計算が間に合わないから、全員ちゃんと入れているだろうという信頼の下、全部開封してから計算をはじめる。
だから封筒は全員分出揃っていても、計算が合わなかった。
光くんはきょとんとした顔で、私を見る。
「でも、俺と紫先生が計算したら、ちゃんと計算は合ったぞ? 新札がくっ付いていたから、それで計算をミスったんだってわかったんだ」
「もし新札が入ってたんだったら、会計の子、もっと慎重に計算してたから、お金が合わないって大騒ぎにはならなかったよ」
「前から思ってたけど、千鶴は俺をいちいち悪者にしたがるよな」
そう言われてしまったら、私はもう答えることができなかった。
実際に、計算はちゃんと合っていたんだから、会計委員のミスってことで終わってしまった。本当のことはわからない。
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