言の葉を交わして

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──とても、とても小さな時。私は一人の神様に出会った。 その神様はとても綺麗な着物を身に付けており、とても美しい容姿を持っていた。触れてしまえば壊れてしまいそうな、そんな危うさを同居させながら……。 『いつかお前が大きくなったら、またココヘと来るといい』 神様はそう言って、当時の私を家へと返した。 無を張り付けたような表情で見下された私は、その顔を仮面のようだと、子供ながらに思ってしまった。強ち間違いでもない気はするが、しかし、罰当たりなのは確かだろう。 あの日の事を思い返しながら、ぼんやりと足を動かす。そのまま、懐かしの小道へと踏み込めば、共に、周囲を覆う空気が震えた。 ぶるりと、肌を栗立たせる程の大きな変化に、体が僅かに反応。ビクリと微かに揺れ、動かしていた足が自然と止まる。 『よう来た。人の子よ』 どこからともなく落ちてきた声が、まるで頭の中に響くように鼓膜を揺らした。ゆるりと顔をあげれば、あの日、あの時目にした美しき姿が、そこにあるではないか。 相も変わらぬ白い着物が、目を引くほどに美しく、また神々しい。それに合わさるように存在する整った容姿も、また然り、だ。 どこかぼうっ、としながらそこに佇む私に、神様は表情をなくしたまま、片手を伸ばした。人とは思えぬ冷たい手が、私の、まだあたたかな頬をそっと撫でつける。 『……久しいな』 たった一言。 こぼされた言葉と共に、美しいその人は動きを見せた。歓迎の意を表さんと、抱擁された体に、ぬくもりが広がる。 『──あぁ! 愛しきお子よ!』 ぎゅうっ、と、これでもかと締め付けられる体に、「うっ」と醜い声が私の口からこぼれ出た。 少しくらい手加減してはどうだと視線をあげれば、『おっとすまない』と、対して申し訳なさそうにすらしていない言葉が、神の口より紡がれる。
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