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神様のアドバイス
「こんにちは、中山さん。金曜はありがとうございました」
コーヒーをテーブルに置きながら、そう言う亜矢に中山は怪訝な顔を向ける。
「え?」
彼女にとっては取るに足らない小さなことだったんだろうと思い亜矢は金曜の心境を説明した。
「中山さんが掛けてくれた言葉で私、すごく元気になれました。ちょっとへこむことがあったんですけど、やっぱり元気に笑顔で頑張ろうって」
そこまで言っても、やはり変な顔をしている。
「誰かと間違ってない?」
平日はほぼ毎日この喫茶店に来てくれている常連さんの顔を間違うわけがない。
「間違ってないと思いますけど」
「金曜って言ったっけ?」
「はい。先週の金曜です」
じゃあ、やっぱり間違いだと中山が笑う。
「私、先週の金曜は送別会があったから、ここには寄ってないもの」
それでも納得が行かず、亜矢は金曜に一緒に働いていたバイトスタッフに聞いてみたが誰も中山さんを見ていないと言う。
30分ほどして、お会計を済ませた中山が亜矢の所へ嬉しそうに寄って来た。
「ねぇねえ。さっきの話、もしかしたら神様かもよ」
「神様?」
「うん。神様はね、時々頑張っている人の所へ行ってメッセージを伝えるんだって。それも身近な誰かの姿になって」
「神様……ですか?」
それなら納得が行くとは言えない話だが神様にしろ彼女にしろ、誰かが自分にエールを送ってくれたことは確かで。
今はとにかくその事実を受け止めたい。
「私の姿になってくれたなんて、なんかいいことありそう」
そう言うと中山は、ありがとうとヒラヒラ手を振って帰って行った。
もしかしたら彼女自身ヒトではないのかもしれないと思いながら亜矢は楽しげな背中を見送った。
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