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私には、神さんがいる。
それは宗教的なものでは全然なくて、ただ私にとっての神さんなのだ。
名前も知らない神さんは、ある日突然私の目の前に現れた。
美しい黒髪、真っ白な肌、華奢な身体、ふわりと揺れるワンピース。
一目惚れだったと言ってもいい。
少し夏を感じるような日差しの午後、神さんは涼やかに私を通り過ぎていった。
その日以来、私は思い描いていた美少女を具現化したような彼女の姿を、それとなく求めるようになった。
しかし待ち伏せしたりだとかそんな無粋なことは一切しなかった。
出来なかった、の方が正しいだろうか。
ただ思いがけず一目見られればそれだけで良い。
神さんに会えた日は知らず知らずのうちに心が穏やかになることを、私は知っていた。
季節が移り変わり、神さんの姿が変わっても、きっと私の中ではあの日に出会った清らかさのまま、彼女は私の神さんであり続けるだろう。
誰にも共有したくない幸せを、私は1人で噛みしめる。
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