宴に迷い込んだ一匹狼

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「自分にも他人にも矯正を強いて、 急かすから君は誤解され易いんですよ」 「余計な世話だ。 俺自身の事など、他人がどう思おうが関係ない」 「りっくんはそうでも、 私等はそれが悲しいよ。 友達なんだもの、ね?」 陽田の介入にホッと息を吐いて シラトリが俺の方へと向き直った。 「ごめんね、ヤドちゃん。 このおにーさん、悪い人じゃねぇんだけど ちょーっと、お節介で口煩ぇだけだから」 「鍋もいい具合じゃ、腹一杯食え食え」 消化不良の鬱屈した感情を抱えて、 オニカゼさんに促されるまま 箸を取って、鍋に突っ込んだ。 陽田とシモザトさんが ヒョウドウと何を話してるのかと 耳を澄ましていたのだけれど それを遮ってシラトリとオニカゼさんが しつこい程に俺を構い倒す。 主にヒョウドウの誤解を解きたい為に 高校時代のエピソードを語り、捲し立てる。 その念を込められる程に 俺を責めたヒョウドウは 彼等と絆が深いのだと思い知らされる。 「実はさ、りっちゃんとガンちゃんが 高校時代はよく喧嘩してんたんだよ」 「せやな、その度に雪尋が 間に入ってくれとってな」 「雪ちゃん、中学生のある時から ミョーにお節介になったからね。 俺がバカやってたのも 全身全霊で止めてたし」 俺を挟む様に過去の話を紡ぐ二人の声。 喋りながらも鍋の中身を減らす。 「んで、とうとう雪ちゃん 胃潰瘍で入院したっけなー」 「せやったな、あれは確か文化祭の後や。 使命果たしたっちゅー感じで そらもう大変やったわ、ガッハッハ!」 二人の会話を半分位聞き流して 唯一知ってる男の名前が出る話だけ 耳から頭の中へと不明瞭な映像として流れ込む。 口内に運んだ食材の味も感触も分からない。 初対面の大人達相手に 相槌すら打たず、愛想笑いもしない俺は さぞ腫れ物の如く疎ましく思われるのだろう。 それを理解していながら 改善に挑む強さのない俺は 人間という生物を嫌う俺は 孤独に死なねばならないのだろう。 彼等は鍋を空にした後、 夜空の下へと消えていった。 部屋の主が彼等を見送りに 一番下まで降りて行った。 俺はその間、手持ち無沙汰な為 食器を片端から流し場に運ぶ。 肝心の鍋が流し場に入らず、 どうするべきか分からないまま立っていたら 玄関の扉が開いた。 .
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