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愚かだ。本当に愚かだ。シャーマンの戦士がキューと鳴くだけの草食動物に怯えるわけがないのに。私はインパラに噛みつきたければ噛みつけば良いとばかりに腕を差し出した。
「このスマホのなかには先輩のプラベートタイムの動画が入っているんですけど、皆にバラしてもいいですか?」
追い込まれたインパラは私の嘘に気づかなかった。ただ目を丸くして、妄想に取り付かれる。妹の春名が部屋に隠しカメラを仕掛け、黒ギャルをおかずに、ズボンを脱いでいるところを画像に取られたと思い込んでいるのだ。先輩の汗が止まらない。
この勝負は私の勝ちだ。私はスマホの録音アプリを親指を掛けるとインパラの眉間に槍の刃先を向けた。
「僕はM男です。秘密を誰にもばらさないで下さい……。上手に言えたら付き合って上げますよ」
インパラは黙り込んだ。私はわざとらしくグランドで自主練をするサッカー部員を見つめた。
「Mバレしたいんですね。まじで気持ち悪い!」
私は上履きのままグランドに歩み出た。
「あ、待って……」
「じゃぁ早く言えよ。このマゾ野郎!」
インパラは真っ赤な顔を見せると声を絞り出した。
「僕はM男です。秘密を誰にもばらさないで下さい……」
「しっかりは録音取りましたらかね」
私はそう言うとスカートのポケットにスマホをしまいインパラの首を縄で縛った。私はそのまま笑顔で先輩の腕に抱きつくとささやいてあげた。
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